奈良の薬師寺に心惹かれるあなたへ。
1300年以上の時を超え、人々の祈りを受け止めてきたこのお寺の魅力を、余すところなくお伝えするブログ記事をお届けします。
歴史から見どころ、美しい仏像、年中行事まで、薬師寺のすべてがここにあります。
時を超えた祈りの結晶、奈良・薬師寺へようこそ
奈良市西ノ京に佇む薬師寺は、ユネスコの世界遺産「古都奈良の文化財」の一つに数えられる法相宗の大本山です。
その歴史は、今から1300年以上前の白鳳時代に遡ります。
天武天皇が、愛する皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を願い、薬師如来を本尊とする寺の建立を発願したのが始まりです。
天皇の深い祈りが込められたこの寺は、幾多の災禍を乗り越え、今なお私たちの心に静かな感動を与えてくれます。
当初は飛鳥の藤原京に建てられましたが、平城京への遷都に伴い、現在の場所へと移されました。
悠久の歴史の中で、火災や兵火により多くの建物を失いましたが、そのたびに篤い信仰心に支えられ、伽藍は再建されてきました。
特に、昭和の名僧・高田好胤和上によるお写経勧進は、多くの人々の心を一つにし、金堂をはじめとする諸堂の復興を成し遂げたことで知られています。
この記事では、そんな薬師寺の奥深い魅力を、歴史、見どころ、仏像、年中行事といった多角的な視点から、たっぷりとご紹介します。
薬師寺の至宝を巡る旅~見どころ徹底ガイド~
薬師寺の境内は、白鳳時代の壮麗な建築様式と、篤い信仰心が織りなす見どころで溢れています。
唯一無二の伽藍配置「薬師寺式伽藍」
薬師寺を訪れてまず目を引くのが、その独特の伽藍配置です。
中央に金堂を、そしてその両脇に東塔と西塔を配するこのスタイルは「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれ、日本では薬師寺が最初とされています。
堂塔の各層に裳階(もこし)と呼ばれる小さな屋根を付けた壮麗な姿は、まるで龍宮城のようだと「龍宮造り」とも称えられました。
白鳳伽藍のシンボル「金堂」と「東西の塔」
- 金堂(こんどう)
薬師寺の中心に位置するお堂で、本尊である薬師三尊像が安置されています。
昭和51年(1976年)に再建された現在の金堂は、二層建ての堂々たる姿で、裳階を持つ薬師寺らしい優美な建築です。 - 東塔(とうとう)と西塔(さいとう)
金堂の両脇にそびえ立つ二つの塔は、薬師寺の象徴的な風景です。- 東塔は、創建当時から現存する唯一の建物で、国宝に指定されています。
三重塔でありながら、各層に裳階があるため六重に見え、そのリズミカルで美しい姿から「凍れる音楽」と絶賛されてきました。
1300年の風雪に耐えたその姿は、見る者に深い感銘を与えます。 - 西塔は、享禄元年(1528年)の兵火で焼失しましたが、昭和56年(1981年)に再建されました。
創建当初の鮮やかな色彩が再現されており、落ち着いた色合いの東塔との対比が、現代の薬師寺ならではの美しい景観を生み出しています。
- 東塔は、創建当時から現存する唯一の建物で、国宝に指定されています。
学びと祈りの中心「大講堂」
伽藍の中で最大の規模を誇る大講堂は、平成15年(2003年)に再建されました。
内部には弥勒三尊像(重要文化財)が安置されているほか、お釈迦様の足跡を刻んだ仏足石(国宝)や、日本最古の歌碑である仏足跡歌碑(国宝)も祀られており、仏教の教えを今に伝えています。
玄奘三蔵の遺徳を偲ぶ「玄奘三蔵院伽藍」
法相宗の始祖である玄奘三蔵の遺徳を顕彰するために、平成3年(1991年)に建立された新しい伽藍です。
堂内には、日本画家の平山郁夫画伯が30年の歳月をかけて制作した「大唐西域壁画」が奉納されており、玄奘三蔵が歩んだ求法の旅路を壮大なスケールで追体験できます。
白鳳の微笑みに出会う~国宝の仏像たち~
薬師寺は、日本仏教美術の最高傑作と称される仏像の宝庫でもあります。
- 薬師三尊像(金堂蔵・国宝)
金堂の本尊で、中央に薬師如来、向かって右に日光菩薩、左に月光菩薩が並びます。
白鳳時代を代表する金銅仏で、その優美で気品あふれる姿は、見る人の心を穏やかにしてくれます。
薬師如来坐像の台座に施された、ギリシャやペルシャの影響を受けた文様は、当時の国際色豊かな文化を物語っています。 - 聖観世音菩薩立像(東院堂蔵・国宝)
東院堂の本尊であるこの像も、白鳳時代の傑作です。
インドのグプタ様式の影響を受けた異国的な顔立ちと、優雅で繊細な姿が特徴で、崇高な気品を漂わせています。
季節を彩る年中行事
薬師寺では、年間を通して様々な行事が行われ、多くの人々で賑わいます。
- 修二会(花会式)
毎年3月25日から31日まで行われる、春の訪れを告げる行事です。
薬師寺の修二会は、ご本尊に十種類の造花が供えられることから「花会式(はなえしき)」と呼ばれ親しまれています。
最終日の夜には、鬼の面をつけた人々が松明を手に練り歩く「鬼追い式」が行われ、法要の結願を飾ります。 - 玄奘三蔵会大祭
毎年5月5日に、玄奘三蔵院伽藍で執り行われる大法要です。
このほかにも、万燈会など季節ごとの行事が催され、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。
薬師寺へのアクセスと拝観案内
- 所在地: 〒630-8563 奈良県奈良市西ノ京町457
- アクセス
- 電車:近鉄橿原線「西ノ京」駅下車すぐ。
- バス:JR・近鉄奈良駅から奈良県総合医療センター行きバスに乗車、「薬師寺」バス停下車すぐ。
- 拝観時間: 午前9時~午後5時(受付は午後4時30分まで)
- 拝観料(白鳳伽藍:金堂・大講堂・東院堂):
- 大人:1,000円
- 中高生:600円
- 小学生:200円
- ※団体割引など、詳細は公式サイトをご確認ください。
おわりに
1300年の時を超え、創建当初の祈りを今に伝える薬師寺。
災禍を乗り越え復興を遂げた白鳳伽藍の壮麗な姿、そして白鳳文化の粋を集めた仏像たちの穏やかな微笑みは、私たちの心に深く響きます。
ぜひ一度、奈良・薬師寺を訪れ、その悠久の歴史と文化に触れてみてください。
きっと、日々の喧騒を忘れ、心安らぐひとときを過ごせることでしょう。